しゅばいん・げはぷと

こんにちは……(全てネタバレ)

おしい!!どうして!!『サスペリア』

リメイク版『サスペリア』を見た。元のは見ていない。
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欠点は大きすぎるほど大きく、「おしい」作品であるが、にもかかわらず良いところが良すぎるので傑作であると言わざるを得ない、その意味でもこちらの心を「引き裂く」ような作品であった。

よい点は説明できない、というかしても意味がないが、もっぱらホラー・ゴア・カオス描写が凄まじかった、とだけ言っておこう。つまり、ホラー映画を見たくてサスペリアを見に行った者にとってはかなり満足できるのではないかと思う。怖いかどうかはわからないが、少なくとも私は、久しぶりに映画を見て目眩を感じた。ここだけ取れば、この作品は大傑作と言ってもいいのだが、しかし「ホラー映画を見たくてサスペリアを見に行った者」はまた、この作品のもう一つの側面(それもかなり大きい側面)に躓くだろう。ナチだのドイツ赤軍だのベルリンの壁だの……余計な政治的な事柄を絡め、物語に政治的含意を持たせようとする「魂胆」がそれである。たぶん、政治的なことこそが映画のメッセージとして高級なのだという考えに囚われた人(実はこういう人は権威に反抗しているようにみえて、自身こそが権威的である)が作ったのだろうが、そこからして完全な間違い、ただの迷信だ。

いや、そこまで言わなくとも、その「魂胆」が成功していればまだよかったのだが、完全に失敗している。ホラー部分と政治的部分の接合が無理矢理であり、端的に言って政治的部分は全てなくしたほうが良かっただろう(そうすれば2時間ぐらいの超傑作になったはずだ。そういうバージョンを出してほしい!)。いや、これは一種のアート映画なのだからその無理矢理さ加減から来る難解さを解くことも含めて楽しいのだ、と言われるかもしれないが、そのようにアート映画をゲーム感覚で扱う水準からものを言ってしまっている時点で、アート映画というものが必要ないと言ってしまっているようなものだろう(だから、「謎解き」アート映画などいらないのだ。アートであることが「よくできていなさ」の免罪符になってしまうからだ。ただし、アート映画そのものがダメだと、私は主張したいわけではないが)。

ともあれ、必見であることは間違いないが、でかすぎる欠点があることもまた疑いようがない。