しゅばいん・げはぷと

こんにちは……(全てネタバレ)

『アリー/スター誕生』に泣く

『アリー/スター誕生』を見た。泣いてしまった。
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とはいえ、監督(ブラッドリー・クーパー)のセンスがとりわけいいとか、話し運びがとりわけうまいとか、そんなことは思わなかった。むしろ、二三回あった無駄にシンメトリーな画面構図のシーンやぶつ切りに見えるような場面転換など、ぎこちなさを感じることも多かったのであるが、しかし(これこそもしかしたら『ボヘミアン・ラプソディ』との決定的な違いかもしれないが)ライブシーン(歌のシーン)が圧巻で、もうそれだけで「よい」と思わざるをえない。つまり、(私はもともとは興味がなかった人だが)レディ・ガガ(の曲と歌唱力)が凄い! これに尽きそうである。特に、「シャロウ」や「アイル・ネバー・ラブ・アゲイン」で急にグッと声が力強くなるところがツボであった。

いや、レディ・ガガが凄かったのは音楽の面だけではない。存在感とでも言えばいいだろうか、本人がどんな人かは知らないが、少なくともこの映画において彼女(アリー)は、「肯定性の塊」とでも言いたくなるぐらい、「自然に自然」であった。自然にならなければという不自然な努力の結果自然に見せているのではなく、もともと自然であって今もそうである、という単純極まりない力強さに溢れていたように思う。だから実のところ、彼女が苦悩している場面というのはあまりこちらに迫ってこなかったのも事実である。というのも、何があろうとも彼女は人生にノーを言うことないだろうと、こちらは彼女の佇まいから瞬時に理解してしまうからである。最後に彼女の歌う歌(「アイル・ネバー・ラブ・アゲイン」)の内容がどんなに否定性に溢れていようと、アリーの歌声と佇まいの力強さは変わらないどころか(恐ろしいことに)ますます強まっていたのであり、この「既に常に人生にイエスと言っている感じ」こそがスター性だなぁ、と思ったのであった。