しゅばいん・げはぷと

こんにちは……(全てネタバレ)

『スカイスクレイパー』という僥倖


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最近、映画を見すぎている。疲れているのだろう。『アントマン&ワスプ』に『ザ・プレデター』……2つとも見なくていい映画だった(つまらなかった)。ドウェイン・ジョンソンが好きなので『スカイスクレイパー』もそうであったら嫌だなぁと心配していたのだが……杞憂であった。最初の過去のシーンからして、これは少なくともつまらない映画にはならないだろうと確信した。最近の実写アクションだったらこれで決まりだろう。客があまり入っていなくて腹立たしくなったほどだった(とはいえ、題材が古臭いのは否めないが、それがよくもある)。

この映画、結構アクションの見せ方がうまいし、ダイ・ハードに出てきそうなあのただのチンピラっぽい敵のボスも含め登場人物たちはみな存在感があるし、それでいてなんだか全編バカらしさが漂っていたりと、結構バランスが良かったと思う。面白かったものだから、見終わった後に監督が誰か調べてみたら、あの『なんちゃって家族』の監督だったなんて! そりゃあ、面白くなるよなぁ!

ところで前回の記事(『THIS IS US 36歳、これから』 - であ・あいんつぃげ)で私は、「家族ないし愛こそ全て」という価値観の内部における「内輪もめ」に過ぎないものを永遠と見せ続ける『THIS IS US』という海外ドラマを批判した。さて、今作『スカイスクレイパー』はどうであろうか? ザ・ロックは永遠と家族のために、家族のために、家族のために……頑張り、そして勝利を手にするわけだが。

いや、今作は「内輪もめ」ではない。理由は2つある。第一に、悪役の活躍が目覚ましく(かなり残虐非道な奴らである)、観客に結構なインパクトを与えると思うが、彼らは明らかに「家族ないし愛こそ全て」という価値観の内部にはいないから。第二に(こちらの方が重要だが)、「家族のために」の過剰さが「家族のために」を逆に相対化してしまって、ほとんどギャグとも言っていい感触を観客に与えるから。この映画を見て別に「感動」する人はいないだろう。ロッキーがエイドリアンを探すように、ラストでザ・ロックが観衆の中から家族を見つけ出そうとも、そこにあるのは「やりすぎ感」だけだから。

良作とされるのは当然『THIS IS US』のような作品なのだろうが、良作が自明として疑わない価値観を(図らずも)『スカイスクレイパー』のようなどうしようもない作品が暴き出してしまう。それにしても『スカイスクレイパー(摩天楼)』って、ダサい題名だ!